井上道義/日本フィル(横浜定期)
井上道義が振る日本フィルの横浜定期。今年12月末での指揮活動からの引退を表明する井上道義。日本フィルを振る最後の演奏会だ。プログラムはオール・ショスタコーヴィチ・プロ。1曲目はチェロ協奏曲第2番。めったに実演を聴く機会のない曲だが、今まで聴いた実演の中では、抜群のおもしろさだった。ショスタコーヴィチ晩年の様式が顕著な曲だ。晦渋とも、暗いとも、謎とも、いろいろなイメージで語られるが、演奏前にマイクをもって現れた井上道義は「ユーモア」といった。「心に余裕がないとユーモアは生まれない」と。そのような解釈が関係するのかどうか、ともかく長大な第3楽章が驚くほどおもしろく聴けた。延々に続くチェロのモノローグが、少しも重くなく、むしろ軽やかだった。チェロ独奏は佐藤晴真だが、その独特の豊かな音と丸みをおびた表現、そして日...井上道義/日本フィル(横浜定期)